もし半年以上戻らなかった時は,三津が望むなら営みも構わない。」
「随分と……思い切りましたね。」
「私も三津の幸せの為ならどんな事でもしようと思って。でも三津がこれを不快に思うようなら彼女の意見も聞いてまた考え直すよ。」
「三津の幸せを考えてくれるのはいいですけど,また禁欲生活言い渡された私の身にもなっていただけませんかねぇ?」
「我慢は得意だろ?」
桂は気付いてないようなので,入江は三津と営んだ事はあえて黙っておいた。ここで話してこの条件を全て白紙に戻される方が困る。せっかく女々しい男の公認で都合のいい男になれるんだ。
入江はそれで条件を飲んだ。後は三津がそれに納得してくれるかだ。瘦面botox
「木戸さんは,今度こそ三津を幸せにする覚悟を決めたそ。でもそれを信じるかどうかはこの先夫婦として歩んで三津が確認せんにゃいけん。
二度あることは三度あると思うんか,三度目の正直で寄り添うか。」
三津は入江の胸に額を押し付けて肩を震わせた。
何で男共はこんな馬鹿なんだろうと思った。
「何なん?二人でそんな話つけて……。私は九一さんと夫婦になりたかったのに……。」
「私も三津と夫婦になって子も欲しかった。でもこうなってしまった今は……。」
「分かってます。これからを考えなアカンのでしょ……。九一さんと立場が逆になりましたね。」
三津はふぅと息をつき,入江は何が?と目を丸くした。
「初めて二人で萩に行った時,好きを捨てたらずっと一緒にいられる。でもずっと一緒にいたらまた好きになってしまう。九一さんそう言いました。今度は私がその立場です。」
入江は丸くした目を見開いた。それから細めた目で三津を見つめた。本当に自分は三津から愛されてると再認識した。嬉しくて堪らない。
だけどこれが三津には生地獄になるかもしれないと思うと,手放しには喜べない。
「ずっと好きでおってよ。木戸さんに注ぐ愛情と同じだけ私にも愛情くれたらいいそ。」
「……何言ってんの?」
三津は眉間にしわを寄せて物凄い目つきをした。夫と同時に別の相手を好きでいるなど非常識極まりなく,ふしだらにも程があると思う。
これじゃあ自分がいるのに他の女を抱いた桂と変わらないじゃないか。それは嫌だ。入江の方は何だその目つきと声を上げて笑っている。この事態をあまり深刻に考えていないのか。それとも空元気なのか。今はそこを見極める余裕もない。まだ自分の事でいっぱいいっぱいだ。
「まだ気持ちの整理はつかへんから,何とも言えません。」
その返答は予想していた入江はそうやねと相槌を打った。
「今は淡々と妻の勤め果たしたらいい。疲れたら甘えにおいで。」
三津は考えるより先に体が動いて,やるべき事をやるのが想像出来ると入江は言う。三津もそこは思い当たるふしがある。
「妻として振る舞う私見て嫌な気分になりませんか……。」
入江はなるに決まってるだろうと三津の頬を摘んだ。これでも真剣に愛してるんだから嫉妬するに決まってる。
「嫉妬はする。でも私は性格が悪いから,三津は木戸さんの妻やのに気持ちは私の方にあると思うと優越感なんよ。
もし三津がまた木戸さんを愛してもそれを支える覚悟はある。
どんな形でも傍におるって言ったやろ?嘘はつかんで。」
三津は顔を顰めて入江を見つめた。嬉しいんだが,それを受け入れていいのか自問自答した。
「木戸さんの妻なのは変えられんけぇ後は三津が私への対応をどうするかや。話した通り,木戸さんはある程度許してくれてる。私は変わらず傍におる。
難しく考えんといて?なるようにしかならん。
私も木戸さんもどうするの?って答えを求めたりせん。過ごしてくうちに自ずと答えが出てくるやろうから。」
「分かりました……ひとまず思うままに生活してみます。」
それを聞いた入江は安堵した表情を浮かべて頷いた。
「でも早速やけど約束破りたい。口づけしたい。」