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Le 26/12/2024
「へぇ…。新撰組発祥の地ですよ!自分もその時からいたかったです!」
市村に関しては14歳で幕臣になってしまった。
もはや新撰組もただの田舎侍の集まりではない。
近藤に関しては大御番組頭取、土方は大御番組頭だ。
沖田や美海などの助勤は大御番組に取り立てられ、監察は大御番並。
平隊士の立場はガクリと下がるのだが、それでも直参である。大した出世だ。
大御番は将軍の護衛のようなものだ。
土方はあまり気にしていないようだが、近藤は大いに喜んだ。
慶応三年六月十日のことだった。脫髮 維他命
ガラッ
「総司!ちょっといいか?」
急に戸が開くと、隊服姿の永倉がいた。
「はい」
沖田は立ち上がると部屋を出る。
最近あまりご飯を食べないため、なんだかおぼつかない足取りだ。
早く薬を完成させなきゃ…。
もう後少しなんだけどなぁ…。
「なんでしょうね?」
市村が首を傾げる。
「さぁ?」
「永倉さん。何ですか?」
「いやぁ。さっきの巡回で鍛冶屋の親父さんに会ってさぁ」
「サブさん!元気でした?」
「あぁ。で、これ、総司に渡してくれって」
ゴソゴソと胸元を探る。
「ほら。手出してみ」
沖田は黙って手を出した。
コロン
「これは!」
「指輪?だっけ?結局総司が模様を決めれなかったからただの銀の塊になって悪いって言ってたぜ」
「いえ!充分です」
なんだか不恰好な曇った銀が手のひらに乗っている。
「ツルツルしたとこで擦ると輝くらしいぜ。頑張れ」
「はい!」
永倉はその場を去ろうとしたのだが思い出したように振り返った。
「早く隊務に戻れるようにしろよ!一番隊がしょげすぎてやりづらいったらありゃしないぜ」
永倉は苦笑いしている。
「すいません」
沖田は笑った。
最近では床に着きっぱなしの沖田の代わりに今は永倉が一番隊と二番隊を掛け持ちしているのだ。
沖田が帰ってくると信じて新しい隊長はつけないし、美海も医療に忙しいため格上げはしない。
早く戻ってあげなきゃなぁ。
沖田は消極的な考えはしなくなった。美海を信じて治ると信じる。
あ。もうすぐ土方さんの薬の時間だ。
不味いし、嫌だなぁ。
沖田は大切そうに指輪をしまうと表情を曇らせながら部屋に向かった。
ガラッ
「ん。遅かったですね」
既に市村はおらず、美海が寝転がりながら煎餅をかじっている。
沖田も近くに座ると煎餅を取った。
「鉄くんはどうしました?」
「鉄くんは土方さんにこき使われてます」
「なるほど」
沖田は頷いた。
鉄くんにしたらいい迷惑かもしれないけど、若い鉄くんを危険に晒したくない土方さんなりの優しさだからな。
まぁ今まで小姓を取っていなかった分容赦はないけど。
それから程なく土方が来て、沖田は嫌々薬を飲んだ。
「相変わらず不味そうですね」
土方が去ってから美海が言う。
「はい。けどこれのお陰でか最近は調子いいですけどね」
苦笑いする沖田を見て心配になる。
確かに咳は減ったが調子はいいのか。
「まぁ病は気からって言いますしね」
バタバタバタバタ!
コンコン!
「「はーい」」
「失礼します!立花さん!怪我人が出ました!至急お願いします!」
「わかりました」
美海は立ち上がる。
「いってらっしゃい」
沖田はヒラヒラと手を振った。
「状態は?」
「はい。腹部を大きく切られ…
次第に美海達の声は遠くなった。
沖田は胸元から指輪を出す。
近くの机で擦ってみた。
「わぁ」
擦った部分だけキラキラと輝く。
私の菊一文字がこんな素晴らしいものになるなんて。
磨けば光るってこう言うことか。
沖田はしばらく指輪を擦った。
Le 17/11/2024
「人と交わることのない山奥で育ったがゆえに、そういった知識や経験が無いのでしょう。共に暮らせば、人としての物言いはすぐに覚えられましょう」
梅ノ井と老臣を見つめ微笑んだ。
イダテンは、姫の口にした言葉に困惑した――単に物の例えか。あるいは深く考えずに出た言葉か。
梅ノ井も、呆けたように姫を見ていた。
姫の言葉が理解できなかったのだろう。
聞き間違えたと思っているのかもしれない。
老臣一人が、姫の言葉に頬を緩めた。
姫は、それよりも、と、やわらかに続けた。
「黒がとてもよく似合いますよ。冬に備えた衣も用意させましょう。殺生をしなくても良いように」
イダテンが打ち掛けていた熊や鹿の毛皮のことを話しているのだとわかった。
「出来ぬ」
即座に答えた。
自分でも驚くほどの強い調子だった。脫髮 維他命
姫は、悲しげに眉根を下げた。
「殺生をしなければならない理由があるのですか」
「話してもわかるまい」切り捨てるような物言いに女房は絶句し、老臣は、怒気をはらんだ鋭い目つきで太刀に手を伸ばした。
イダテンは身動ぎひとつせず、老臣の目を見返した。
動けなかったのではない。
言葉で伝えることをあきらめたのだ。
怖ろしくはなかった。
もはや守るべきおばばもいない。
死んで泣く者もいない。
生まれも育ちも違う者同士がいくら話したところで、わかりあえぬのだ。
ゆえに、言葉を飲み込んだのだ。
――おれの殺生は食うため、生きるためだ。
武士のように領地を奪いあうためではない。
先に住んでいた者から土地を取り上げ、収穫を取り上げ、餓死させるためではない。
坊主や、この地の領主どもがなにをしているか、知っておるか?
百姓に銭を貸し、返せねば借金のかたに下人とし、次は、その下人を売り買いする。
そのような坊主の説く、衆生の救いとやらを信じられるか?
領地や利を守るため僧兵だけでは足らず「死こそ救済」と民百姓を煽る坊主の言い草を信じろと言うか?
その領主や坊主の上に立ち、このような豪奢な邸に住み、着飾って暮らしている者に話したところで何になる。「じい!」
制止する姫の声が聞こえた。
だが、姫が止めなくても忠信は太刀を抜かな
かっただろう。
イダテンの目を見たからだ。
これほど暗い目をした小童を見たことがない。
生に執着しなくなった者の目だ。
不憫なことだ。
わずか十歳にしてこの世に絶望している。
あれはまだ、忠信が御衣尾にある六地蔵に供え物をしていた二年ほど前のことだ。
兼親の郎党と思われる男が崖から落ちて命を落とした。
忠信が追い込んだのだ。
その男が直前にイダテンに矢を射かけていたからだ。
あの時、イダテンはいともたやすくよけた。
ところが、こたび、こやつはあっさりと倒されていた。
しかも、姫の牛車の前で、だ。
衣が濡れ、熱を出していたのは確かだったが、イダテンを痛めつけていた男達のことを調べさせた。
武辺者と言われる忠信とて、それぐらいの頭は回る。
兼親たちとつながっていたことが分かった。
イダテンを潜り込ませるための策ではないかと疑った。
イダテンが自分の意志で姫や主人の命を奪いに来るとは思わなかったが、おばばが質に取られていたら話は別だ。
そう考えたからだ。
だが、いらぬ心配だったようだ。
少なくとも人の命を奪おうとする者の目ではない。忠信は柄から手を離したが、梅ノ井の興奮はおさまらなかった。
「なっ、なんという無礼なもの言い! 忠信殿、このような者を許しておいて良いのですか?」
「梅ノ井殿」
忠信は、梅ノ井のかん高い声にうんざりしながらも感情を押し隠した。
もともと世の習いにうるさい、このおなごとは性が合わぬのだ。
「梅ノ井殿の言われるように、恩人である姫様にとる態度ではない――わしとてそう思いますぞ。とはいえ、梅ノ井殿も知ってのとおり、イダテンは、その力、この世に並ぶものなしと言われたシバの子じゃ。
Le 27/09/2024
に天下布武に向けて順調に駒を進められたとしても、姫の境遇はずっと今のまま、
事情を知る者たち以外とは、話すことも、顔を合わすことも出来ず、 ただひたすら、身を隠して生きてゆくことになるのです」
「──」
「少なくとも、私や殿が生きている間は、姫の生活は我らが支えてやることが出来まするが……我らがいなくなったら、姫はどうなりましょう?
誰が姫を生活を支え、守ってやるのでしょう? 誰が、姫の為に必要な物を揃えたり、お付きの者たちにを支払ろうてやるのでしょう?」
信長は伏し目がちに、黙って濃姫の話に耳を傾けている。
「やはり、姫の先々のことを考えますと、あの子の存在を守り続けてくれる、強力な支えが必要にございます」
「…それが、奇妙じゃと申すのか?」
信長は双眼を薄く開き、静かに首肯する妻の面差しを眺めた。脫髮 維他命
「奇妙殿はこの織田家のご嫡男。いずれは殿の後を継いで、織田家の当主となるお方にございます。それに何よりも、
姫と奇妙殿は血の繋がった実の──。姫の行く末をお頼みするのに、奇妙殿ほど相応しいお方はおりませぬ」
「……奇妙に、複雑な姫の事情が理解出来るであろうか?」
「奇妙殿は実に賢き御子にございます。それに十三歳と申せば、物事の分別が出来、ある程度の大人の話にもついて来られる歳にございます」
奇妙ならば大丈夫だと、濃姫は強気に説得にかかる。
「姫の、我らの御子の将来の為にございます。殿、何卒 姫のことを奇妙殿にお話しする旨、お許し下さいませ」
「……」
「どうか──」
濃姫は万感の思いを込めて、夫の膝の前で平身低頭した。
それを黙って見つめる信長の面差しは、悩ましげであり、しかしどこかなだった。
妻の申し出を受け入れようと必死になっている反面、頑固で慎重な地金が、思わず表に出てしまうようである。
それでも信長は、顔を上に向けたり、首を横にたりしながら、何とか己の答えを引き出そうと努めていた。
やがて彼は「…ぅむ」と、唸るような声を喉奥から発すると
「確かに、奇妙が姫の後見となってくれれば、これほど心安いことはなかろうな」
若干の渋々さが滲み出しながら、妻が求めているであろう前向きな返答を口にした。
濃姫は両の手をつかえたまま、静かに顔だけ上げると「ならば、殿…」と、期待を込めての細面を仰いだ。
「まぁ……良いのではないか。兄姉の誰も、己の存在を知らぬとあっては、姫も哀れである故」
それを聞いて濃姫は、瞬時に満面を笑い皺の渦にした。
「寛大なお心をお示し下さり、まことに幸甚至極に存じ奉ります──」
「なれど、奇妙が姫のことをみだりにに話したりせぬよう、くれぐれも気を付けさせよ。母上ではないが、儂もこれ以上の厄介事はご免じゃ」
「承知致しておりまする。その旨は、私から奇妙殿にしかと申し伝えておきます故」
濃姫が嬉しそうに頭を下げると、信長はふいに「おっ」という顔になって
「──そうじゃ、そうじゃ。良い機会である故、明後日の姫の名付けの席に奇妙を招き、二人を引き合わせては如何であろう?」
と、軽く眉をひそめる濃姫に告げた。
「…姫の名付けの席?」
「応よ。長らく待たせてしもうたが、ようよ姫に似合いの名を思い付いた故、明後日、麓の館の姫の御殿で披露しようと思うてのう」
「ま、左様にございましたか」
「実に良き名である故、そなたも気に入ってくれるはずじゃ」
信長があまりにも自信ありげに言うで、濃姫の期待感も自ずと向上した。
「いったい、どのような御名を姫に付けて下されたのです?」
Le 24/07/2024
政秀の懇願によって一通り終えていた読経は、また頭から読み直されるという異例の事態となった。
なかなか焼香が行われない事に、本堂に集まった人々は一様に眉をひそめたが、その理由を問う者は誰もいなかった。
わざわざ訊かずとも、喪主の席に腰を据える者がいないのを見れば、おおよその察しが付くからだ。
しかし、あまりにも経が長い為、参列者の中には 瘦面botox
「信長の殿はかような席においても御遅刻か。さすが尾張の大うつけ、やる事が大胆じゃのう」
「遅刻ならばまだ良いが、この分では、殿が来られぬまま葬儀が終わってしまうのではないか?」
「それは面白い、喪主のいない葬儀か」
「あの殿ならばやり兼ねぬ」
と、好き勝手に囁き合う者たちもいた。
『 殿、どうか早ようお越し下さいませ。 次期当主であるあなた様のご威光を、皆に知らしめる為にも。亡き父上様の為にも 』
濃姫は信秀の位牌に向けて端然と合掌しながらも、心の中では、信長が一秒でも早くこの場にやって来ることを願っていた。
今度は途中で逃げ出したりせず、信秀を最後まで、しっかりと見送ってあげてほしかったのである。
そんな時──
本堂の入口の方から「…殿ッ!」「信長様のお越しじゃ!」という、人々の声が響いて来た。
信長の到着に、濃姫も政秀も思わず顔を綻ばせた。
『 殿、やはり来て下されたのですね 』
濃姫は心の中で呟くなり、喜びに満ちたその面差しを素早く後方へと向けた。
が、本堂の入口へとやって来た信長の姿を認めた瞬間、濃姫も政秀も愕然となった。
信長は、当然城に用意されていたであろう薄墨色直垂の喪服に着替えることもなく、
いつもの山賊のような格好のまま、腰に巻いた縄帯の周りに大刀や火打袋を幾つも下げた状態で、平然とやって来ていたのである
その、場を弁えぬ姿に、一同は驚きを通り越して唖然となった。
僧侶たちによる規則正しい読経も、信長の訪れによって一気に乱れ、不協和音を奏で始めていた。
「…と…殿…何という…」
政秀は喉の奥から絞り出すような声で呟くなり、本堂の端を通り、すかさず信長の側へ駆け寄った。
「これは…、いったい何の真似でございまする!何故に左様な身形のままで参られたのです!?
本日は誰あろう、父君たる大殿のご葬儀にござい──」
「爺よ」
信長の冷たく鋭い眼差しが、政秀の狼狽え顔を射抜いた。
「今、この場に、親父の死を心から悲しんでおる人間は何人おろうのう」
「は ?」
「儂には見えるぞ、爺。親父が死んだのをこれ幸いとばかりに、尾張一円を我が物にせんと企む、皆の笑い顔がな」
「……」
「果たしてこの中の誰が敵で、誰が味方か──。よう吟味してみる必要がありそうじゃな」
「吟味?」
「無論それは、爺、そなたも例外ではないぞ」
不敵な笑みを浮かべる信長に、政秀は小首を傾げた。
「…いったい、何のお話をなされているのです」
「何、ただの独り言よ」
信長と政秀が入口に佇んだまま、なかなか次の行動に移ろとしないのを見て、
秀貞は痺れを切らしたように立ち上がり、足早に彼らのもとへ向かった。
「これはまた、随分とゆっくりな御参上でございますな、殿」
「佐渡…」
「なれど、お越し下さいまして安堵致しました。喪主である殿がこの場におわさねば、我々も織田家重臣としての面目が立ちませぬ故」
本心を押し隠すようにして告げる秀貞の言葉を、信長はしれっとした顔で聞いている。
Le 26/06/2024
「……だがね。あの本を読み進めていく中で、ひゐろさんが浮かんだのは確かだよ。主人公は友人・が亡くなって以降、つきあっていた女性・お玉さんを訪ねていく。主人公は友人に悪いなという気持ちと、話をしたい気持ちで揺れ動いている。読んでいくうちに、お玉さんがひゐろさんのように感じられて、無性に会いたくなった」
斎藤は側に横たわるひゐろの首筋に、口づけをした。
ーーー「無性に会いたくなった」
斎藤が初めて口にした、気持ちの吐露だった。
心と身体が重なる悦びを、ひゐろは初めて噛み締めた。瘦面botox
「私もあの本を読みながら、胸が高鳴ってしまいました。私も主人公の姿を、斎藤さんに重ねていました」
ひゐろは、斎藤に身を寄せた。
「でもあの主人公は、周囲にいる女性を手当たり次第興味を持つね。その点は、僕とは違うよ」
そう言って斎藤は、再び笑った。
同じ本を読み、お互い同じようなことを感じていたことが、ひゐろにはこの上なくうれしかった。
「主人公の友人・表は、交通事故でなく病で亡くなった。彼は死期を感じていたせいか、主人公にお玉さんを託すような旨を告げる。僕の勝手な解釈かもしれないが、飯田もそんな気持ちであの世にいるのではないだろうか。生きている人間しか、生きている人を救えないものだ。その役を僕が務めていく」この世に生きてる私を救いたい、その役割を担いたいと。
そのようなことを言ってくれる人がいるのだと。
ひゐろの目に涙が溢れ出した。
「こうして斎藤さんと私が暮らしていることを、後ろめたく思わなくてもいいの?」
「いいさ。飯田はきっと喜んでくれていると、信じている。いつかいっしょに、飯田の墓参りに行こう」
「ええ」
斎藤の言葉を聞いてを覚えたせいか、ひゐろはいつの間にか眠ってしまった。
翌朝、ひゐろは銀座に仕事へ出かけた。
口入れ屋に着くと、事務員がひゐろに声をかけた。
「初子さんをご指名で、お客さんが来ている。すぐにお客さんのところへ行ってくれないか」
「わかりました」
お客さんのところへ行くと、後ろ姿の男の足元にスネークウッドのステッキが見えた。
「……原康太郎さん!その節は、ありがとうございました」
ひゐろは原の前に立ち、深々と頭を下げた。
「初子くん。……いや、風倉ひゐろくん、元気かね?」
「おかげさまで元気です」
ひゐろは、笑顔を見せた。
「にあるうちの貸家は、どうかね?」
「非常に快適です。ご紹介してくださって、本当に感謝しております」
「それを聞いて、安心したよ。久しぶりに銀座を訪れたので、ここに立ち寄った。いっしょに昼飯でも食べないか」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」ひゐろは、原の車に乗り込んだ。
「ひゐろさん、寒いから牛鍋でも食べに行きませんか?」
「ぜひ。楽しみにしております」
「店は、浅草にあるんだ。それでは出発しよう」
車は、銀座から八丁堀へ向かった。
「ひゐろさん、今朝の新聞をご覧になったかね?」
「いいえ。朝が早かったので、ゆっくり目を通しておりません」
「朝刊に、ワシントン海軍軍縮条約が結ばれたとあったよ」
「それは、どういう条約なのでしょうか」
「簡単に言えば、米英日の主力艦を五・五・三の割合に保有するということさ。つまり米国は英国と共同して、日本の軍備拡張を抑えることに成功した。そして、日英同盟も廃棄となった。日清・日露戦争で得た、中国への権益に対して、米国がを入れてきた形になる」
「中国で反日運動があったことは、存じ上げています。日本の得た権益に対して、中国はもちろん、欧米も警戒しているということでしょうか」
Le 27/04/2024
もし半年以上戻らなかった時は,三津が望むなら営みも構わない。」
「随分と……思い切りましたね。」
「私も三津の幸せの為ならどんな事でもしようと思って。でも三津がこれを不快に思うようなら彼女の意見も聞いてまた考え直すよ。」
「三津の幸せを考えてくれるのはいいですけど,また禁欲生活言い渡された私の身にもなっていただけませんかねぇ?」
「我慢は得意だろ?」
桂は気付いてないようなので,入江は三津と営んだ事はあえて黙っておいた。ここで話してこの条件を全て白紙に戻される方が困る。せっかく女々しい男の公認で都合のいい男になれるんだ。
入江はそれで条件を飲んだ。後は三津がそれに納得してくれるかだ。瘦面botox
「木戸さんは,今度こそ三津を幸せにする覚悟を決めたそ。でもそれを信じるかどうかはこの先夫婦として歩んで三津が確認せんにゃいけん。
二度あることは三度あると思うんか,三度目の正直で寄り添うか。」
三津は入江の胸に額を押し付けて肩を震わせた。
何で男共はこんな馬鹿なんだろうと思った。
「何なん?二人でそんな話つけて……。私は九一さんと夫婦になりたかったのに……。」
「私も三津と夫婦になって子も欲しかった。でもこうなってしまった今は……。」
「分かってます。これからを考えなアカンのでしょ……。九一さんと立場が逆になりましたね。」
三津はふぅと息をつき,入江は何が?と目を丸くした。
「初めて二人で萩に行った時,好きを捨てたらずっと一緒にいられる。でもずっと一緒にいたらまた好きになってしまう。九一さんそう言いました。今度は私がその立場です。」
入江は丸くした目を見開いた。それから細めた目で三津を見つめた。本当に自分は三津から愛されてると再認識した。嬉しくて堪らない。
だけどこれが三津には生地獄になるかもしれないと思うと,手放しには喜べない。
「ずっと好きでおってよ。木戸さんに注ぐ愛情と同じだけ私にも愛情くれたらいいそ。」
「……何言ってんの?」
三津は眉間にしわを寄せて物凄い目つきをした。夫と同時に別の相手を好きでいるなど非常識極まりなく,ふしだらにも程があると思う。
これじゃあ自分がいるのに他の女を抱いた桂と変わらないじゃないか。それは嫌だ。入江の方は何だその目つきと声を上げて笑っている。この事態をあまり深刻に考えていないのか。それとも空元気なのか。今はそこを見極める余裕もない。まだ自分の事でいっぱいいっぱいだ。
「まだ気持ちの整理はつかへんから,何とも言えません。」
その返答は予想していた入江はそうやねと相槌を打った。
「今は淡々と妻の勤め果たしたらいい。疲れたら甘えにおいで。」
三津は考えるより先に体が動いて,やるべき事をやるのが想像出来ると入江は言う。三津もそこは思い当たるふしがある。
「妻として振る舞う私見て嫌な気分になりませんか……。」
入江はなるに決まってるだろうと三津の頬を摘んだ。これでも真剣に愛してるんだから嫉妬するに決まってる。
「嫉妬はする。でも私は性格が悪いから,三津は木戸さんの妻やのに気持ちは私の方にあると思うと優越感なんよ。
もし三津がまた木戸さんを愛してもそれを支える覚悟はある。
どんな形でも傍におるって言ったやろ?嘘はつかんで。」
三津は顔を顰めて入江を見つめた。嬉しいんだが,それを受け入れていいのか自問自答した。
「木戸さんの妻なのは変えられんけぇ後は三津が私への対応をどうするかや。話した通り,木戸さんはある程度許してくれてる。私は変わらず傍におる。
難しく考えんといて?なるようにしかならん。
私も木戸さんもどうするの?って答えを求めたりせん。過ごしてくうちに自ずと答えが出てくるやろうから。」
「分かりました……ひとまず思うままに生活してみます。」
それを聞いた入江は安堵した表情を浮かべて頷いた。
「でも早速やけど約束破りたい。口づけしたい。」
Le 02/03/2024
そう声を掛ければ三津は声に合わせて深呼吸をする。
「はい,吸って……吸って……吸って……。」
「ねぇ吐かせて?」
三回吸った所で肺パンパンだわとご立腹。
「ふっ……ふふっ。だって素直すぎるんで。か……可愛いですね……。」
「そんな笑って言われても馬鹿にされてるようにしか思えませんが。」
とんだ悪戯っ子だなと頬を膨らますが,すっかり気持ちも軽くなっている自分にも気付いた。喉を鳴らし肩を揺らして笑うこの姿何度見たことか。
「……お陰で落ち着きましたありがとうございます。」 瘦面botox
「それなら良かった。」
満足したのか入江はまた本を開いた。それを見てようやく集中出来ると三津は黙々と手を動かした。
この静かな時がどれほど流れたかは分からないが,
「失礼するよ。」
お迎えの声に三津は嬉しそうに障子の方を見た。
「三津帰ろうか。」
「はい!入江さん多分ちょっとはマシになりました。」
三津は着物を丁寧に畳んでどうぞと突き出した。
「ありがとうございます。また明日お願いする用の着物作っときますね。」
作ると聞いて三津の眉間に皺が寄った。
「え?態と破る気?その前にこの着物もどんな遊びしたらそんな破れ方するんですか。」
「そりゃ三津さんには分からない大人の遊びですよ。明日もお待ちしてますね。」
そんな入江に反論しようと口を開きかけた三津を桂が止めにかかった。
「九一,からかうのはこの辺までにしといてくれ。」
これ以上相手にしては帰るのが遅くなる。早く帰って二人の時間を過ごしたいんだ。
言い返せなくてちょっと顰めっ面の三津を部屋から連れ出して帰路についた。
「九一ともすっかり仲良くなってるね。」
「遊ばれてるだけです。」
中身はとんだ子供だと頬を膨らませた。
「私の知らない所で楽しそうなのはちょっと妬けるね。帰ったら独占させてくれよ?」
膨れた頬に右手を添えて親指で三津の下唇をなぞった。
「ちょっ!道端で止めてください!」
「何で?これ以上の事して欲しくなるから?」
「こんな道端でそれ以上何する気ですか?桂さん。」
二人の目の前には不機嫌そうに腕組みをする吉田。
「三津お土産あげるよ。さぁ藩邸に戻ろう。」
ぽかんとする三津の手を取り藩邸へと引き返させようとする。その手を叩き落とそうとした桂に吉田は耳打ちをした。
「すぐ近く。鬼の密偵が彷徨いてます。」
『なるほど。早速私と三津の安息の場所を探ろうなんて不躾にも程がある。』
桂と吉田は頷き合うと三津の両側からそれぞれ腕を絡めとり,
「え?何?理由あるならちゃんと教えて?」
半ば引きずる様に藩邸の中へ戻った。「あれ?どうしたんですか?」
連行される様に戻って来た三津を見てアヤメが駆け寄った。
「アヤメさんすまないが今日の夕餉私と三津の分も頼めるかな。」
「勿論です桂様!すぐにサヤさんに伝えて参ります!」
アヤメは笑顔で頭を下げるとすぐさま三人に背を向けて走った。
「アヤメさんてあんなに明るい子でしたか?」
吉田が首を捻って桂を見た。
「今日で三津と仲良くなっていた。私に隠し事をする程に。」
にっこり笑って三津を見下ろす。
「根……根に持ってらっしゃいますね……。」
引き攣った顔の三津を目に映し,態とらしく何が?と小首を傾げて見せた。
『それを問い詰めるのを帰宅後の楽しみにしてたと言うのに。』
藩邸では何も出来ないではないかと顔には出さないが腹立たしい。
「おぉ三津さんまだ帰っちょらんかったか。で,これは何事じゃ?」
外から戻った乃美が桂と吉田に両側から腕を絡めとられた囚われの身状態の三津をしげしげと見た。
「乃美さん空いてる部屋を一つ三津に充てがってもらえませんか?どうやら壬生狼がこの辺りまで来てるようで。」
Le 19/01/2024
天気は最悪だけど少し歩いてみるか。迷子にならない程度にね。
当てもなく歩いているようで本当は違う。
視線は何かを探してる。足も誰かを探してる。
「…来ちゃった。」
川の水面に出来る波紋を橋の上からぼんやり眺めた。
淡い期待が三津をここまで歩かせた。
ここに来たから会える訳でもないのに,瘦面botox もう少し,もう少しだけと橋の上に佇む。
袴の擦れる音がする度に,顔を上げて傘から相手の顔を覗くけど,三津が会いたい人じゃなくてがっくり肩を落とした。
どれくらいそうしていたか。
流石に雨に濡れたせいで体が冷えてきた。
『もう帰ろう…。』
別に待ち合わせをしてた訳じゃないし,会える確証があった訳でもないし。
自分が勝手に会えそうな道をふらりと歩いて,思い出の場所にやって来て,勝手に立ってただけ。
それでも自分の気持ちに素直になって,会いたいと思ったら,もう立場なんて関係ないと思った。
どこに居るか分からないけど,見つけたいと思った。
思うよりも体が先に動いてた。
『長州藩邸ってどこにあるんやっけ…?』
ちゃんと場所を聞いて覚えてたら良かった。
自分では見つけ出す事は出来ないのだろうか。
前みたいに町で偶然出くわせたらいいのに。
限られた三日間でもし会えたなら,運命かもしれない ――。
『でも,そんな上手くいく程人生甘くないよなぁ…。』
雨に濡れた体をぶるりと震わせた。
やっぱり今日は帰ろう。これで風邪を引いて明日を無駄にしたくない。
後ろ髪を引かれながら歩く帰り道。
三津が完全に呆けて歩いている所でしっかり腕を掴まれた。
「え!?」
驚いたのも束の間,相手の顔を確認する事も出来ず,口を塞がれ,長屋と長屋の隙間の細い路地に引きずり込まれた。
『またや…。油断した…。』
手から離れた傘が足元で転がる。
怖いと言うより,うんざり。
また“土方の女”と間違えられてるんだろうから。
だけど違和感も感じた。
身動きは封じられてるのに,何かが違う。
羽交い締めじゃなくて,何だか包まれてるような不思議な気分だった。
脅し文句も言って来ない。刃物もちらつかせない。
目的が全く見えなかった。
すると耳元でふっと笑ったのが分かった。
顔のすぐ横で息づかいを感じる。
「…だぁれだ。」
三津の耳に甘い声が響く。
だぁれだ … 。
何てふざけた奴なんだ。
肘で思い切り腹を突いてやろうか。
…って,普通なら思うんだけど何かが違う。
口を塞ぐ手も体の自由を奪う腕も,ほんのり優しい。
自分を愛おしむように,頬をすり寄せている。
『もしかして…。』
もしかしたらもしかする?
三津は恐る恐る口を塞ぐ手に自分の手を伸ばした。
やっぱり体を抑えつけるつもりは無いらしい。
三津の腕はすんなり上がった。
そして口を塞ぐ手をそっと外した。
「……桂さん?」
自信なさげに呟いた。
もし違ってたら,この身がどうなるか分からない。
期待と不安が入り混じって鼓動が早くなる。
立ち尽くしていたら,両腕でしっかりと抱き締められた。
さっきよりも腕には力がこもっていた。
耳元で呼吸を感じた。
「当たり。会いたかったよ…三津。」
この腕の中で溶けてしまいそうな,甘く優しい声。
忘れかけてた温もりが三津を包む。
だけど,三津の頭の中は真っ白。こんな再会になるなんて。
「お…お久しぶりです…。元気でしたか?」
「元気だよ。ずっと探してたんだよ?」
三津の中で何かが弾け飛んだ。それは多分理性ってヤツで,きっと本能がそいつを追い出した。
ポーンと後ろから蹴飛ばして放り出したんだ。
『会いたかった?探してた?三津って呼んだ?』
理性が吹っ飛んだ頭の中は混乱状態。
桂の言葉がぐるぐる巡る。